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#16:20071212 [セミナー]

2007年最後の第2考古学セミナーは、佐藤正人さんに「場・“遺跡”・“遺構”・もの・ことば(証言) -国民国家日本の侵略犯罪を認識する方法について-」と題して問題提起をしていただいた。佐藤さんにお会いするのは、去年の春以来である(『大量埋葬地論』【2006-05-25】参照)。

当日配布された発表要旨より、一部を抜粋して紹介する。

「場」
人間集団の生活・労働圏は、他の人間集団の生活・労働圏と交錯しあっている。
その交錯の単位(範囲)をどのように設定するかは、設定者の社会観・歴史観に規定される。
「戦争遺跡」? 「戦跡考古学」?
「戦争遺跡」という用語には、侵略犯罪の証拠という意味が消されている。
「戦争遺跡」というコトバの非科学性、日本ナショナリズム
住民虐殺はほとんど「遺跡」として残されていない。
日本ナショナリズムを克服する考古学を! 
日本の侵略犯罪を明らかにする方法としての考古学における「遺跡」概念の明確化。
日本の侵略犯罪(国家犯罪)の証拠:侵略遺構
犯罪事実を明確にしなければならない。
「文化財(貴重な国民的財産)」指定問題。
海南島における日本の侵略犯罪
国民国家日本の海南島における侵略犯罪を総体として認識する方法。
ことば・もの
世界史認識・世界史叙述の意味と方法
世界は地域や国家の集合体ではなく、世界史は地域史や国家史の綜合史ではない。」

戦争には、大きく二種類ある。侵略戦争と防衛戦争である。ある一つの戦争が、立場によって侵略戦争となり、防衛戦争となる。他国を侵略する者たちと自国を防衛する者たちとによって。
日本の近現代を特徴づけるのは、戦争の時代であるということである。それも全て侵略戦争の時代であるということである。
アイヌモシリ(北海道)、ウチナー(沖縄)、台湾、中国、朝鮮、モンゴル、ミクロネシア、そして海南島。
だから、日本における近現代考古学は、その時代認識として侵略戦争の時代を対象とした研究であるということが肝要となる。

日本における近現代考古学にも、大きく二種類ある。侵略戦争という時代認識を基調とした日本近現代考古学と侵略戦争という時代認識を欠落させた日本近現代考古学である。このことは、日本社会において近現代考古学を実践する際の根本問題である。
煉瓦・地下工場・お茶碗・土管・漁場遺構・ガラス瓶・在地系土器・記憶・消費理論・近代文化遺産・・・
侵略戦争という時代規定を欠落させた近現代考古学は、「戦跡」という名の個別モニュメントの保存を目的とした「モニュメント考古学」や単に過去を懐かしむ「レトロ考古学」、先史以来の方法論を延長した「近世延長考古学」となる。

「虐殺の「場」での科学的な「発掘」が必要である。それは、虐殺という事実を「発掘」することである。虐殺現場で、「発掘」するのは遺骨という「物」ではない。
科学的な発掘とは、「場」から「物」を切りはなしてとりだすのではなく、「場」と「物」との関係を解き明かし、その「場」でおこなわれたことをできるかぎりくわしく明らかにする作業だと思う。」(紀州鉱山の真実を明らかにする会2007「証言(ことば)・「場」・「物」・記録 海南島における日本の侵略犯罪の真相究明」『写真集 日本の海南島侵略と抗日反日闘争』パトローネ特別号:107.)

「日本のアジア侵略を肯定する近現代史研究者の妄論が、撤回されずに維持され続けているのはなぜなのか。それは、①、誤った立論には徹底的に批判を加え、批判する過程で批判者も被批判者も共に学び合うという相互批判の作風が日本の研究者の間で極めて薄いためであり、②、十分な検討もなしに謬論の一部または全部を追認する研究者がいるためである。」(佐藤正人1989「植民地の「開発」は侵略の手段である」『アジア問題研究所報』第4号:21.)

「侵略の構造のなかの『共生』でなく、侵略の構造を破壊する共闘を」というよびかけに応え、わたしも「侵略の構造を破壊する共闘」としての歴史研究をすすめ、過去の侵略の事実を明らかにし、民衆のたたかいの勝利と敗北を総括し、日本帝国主義者の策動にひとつひとつ対抗していくたたかいの拠点を確実なものとしていきたい。」(佐藤正人1996「「八・一五」五一年後の「ポストコロニアリズム」」『アジア問題研究所報』第11号:14.)

最後に、「たとえ少数であったとしても、そこに確たる理論が、核になる思想が構築される限り、その営みは、揺るぎないものとなる」という、発題者が身をもって獲得してきた経験知を、第2考古学に対する励ましの言葉として頂いた。


タグ:侵略
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