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小菅2014「岩宿時代のイエとムラ」 [論文時評]

小菅 将夫 2014 「岩宿時代のイエとムラ」『季刊 考古学』第126号、特集 日本旧石器時代の成り立ちと文化、雄山閣:57-60.

「…ブロックあるいは遺跡を解明する具体的な分析手法は、1966年に始まった埼玉県砂川遺跡に基づいて安蒜政雄が開発した「個体別資料分析」によって確立されたといえる。個体別資料分析法は、遺跡から発見された石器類を、同じ原石ごとの個体別に分類し、その石器製作工程を明らかにするとともに、資料が遺跡のどの位置から発見されたのかを検証していく方法である。 (中略)
これらの具体的な石器同士を関係づける分析作業を経ることによって、個体別資料には、原石の表皮の部分はないものの、最後に残された石核である「残核」があり、それに剥片類がセットとなった石器作りの後半部分があるA群、原礫の表皮や途中の剥片類はあるものの、残核が含まれないB群、石器製作の工程を示すような関連資料が残されていないC群という3つの資料群に分類された。」(小菅2014:58.)

破綻した幻想が、語られ続けている。

「「非常に微細な(小指の爪より小さい程度の)剥片や石器の調整剥片」(戸沢1968,16頁)である砕片を含む全ての石器資料を同一であるという母岩別に区分するのはもともと無理があり、なおかつそうした砕片が存在したかどうかによってその母岩資料がその<場>で製作されたのか搬入されたのかという行動解釈の根拠とするのはなおさら無理があり、本来7つの類型に区分すべき母岩類型をわずか3つに区分して全てを説明する「砂川モデル」は甚だしく無理があると言わざるを得ない。」(五十嵐 2013a 「石器資料の製作と搬入 -砂川三類型区分の再検討-」『史学』第81巻 第4号:138.)

ある一方では「甚だしく無理がある」と言っているのに、他方では「各地点の関係性の強弱が実証的に示された」(小菅2013:58.)と言うのでは、コミュニケーション・ギャップなどという生易しい段階は遥かに通り過ぎ、そのディスコミュニケーション(それも一方向の)を誰しもが承認せざるを得ないだろう。
「実証的」という日本語が、どのような意味を有しているのかというレベルから話し合わなければならないとすれば、それはかなりのエネルギーを要する作業となる。

「いずれにしても、個体別資料分析法を駆使することによって、遺跡内のブロックとそれらの相互の関係も実証的に研究することができるのであり、遺跡の構造研究は、この方法を基盤として個々のイエを明らかにすることから始まるのである。」(小菅2014:59.)

なるほど、これは既に「信念」の世界に近づいている。
そして「…円環部にはイエが円形に並ぶ、定型的なムラの姿が浮かび上がってきたのである」(小菅2014:60.)。

「石器製作場所は居住生活の中心の近傍にあった、という含みをもたせた指摘は、住居跡だ、集落だといったとんでもない方向に飛躍をとげたのである。この間の学内での討議がしのばれるが、かつて戸沢が慎重に回避していた方向への全面的な転換に注意すべきであろう。一度切られた舵はもとにはもどらないのがならいである。」(田村 隆 2012 「ゴミ問題の発生」 『物質文化』 第92号:2.)

旧石器時代の遺物集中部を「イエ」の跡とみなす「月見野仮説」(田村2012:1.)と全ての非接合資料をも同一母岩に識別する「原料の二重構成と時差消費」なる「砂川仮説」(五十嵐2013a:139.)を両輪として、「日本旧石器時代の成り立ちと文化」が述べられている。
これを、何と言おうか。
「元に戻らない舵」、すなわち「ガラパゴス化」である。

「岩宿時代では、構造物としての家を見出すことは困難であったが、世帯を反映したイエを、個体別資料分析法を駆使することで解明することができた。イエが集合したムラの様子は、個体別資料分析法とその視点をもつことにより、イエの分析を経てムラの状況やその構造を明らかにすることができる。」(小菅2014:60.)

何故、このようなことになってしまったのか?
要因の一つは、同じ雑誌に掲載されている論者によって簡潔に述べられている。

「最近は、かつてのような学派間の行き過ぎた感情的対立は薄れ、それは学界の健全な発展にとって良いことであるが、反面、護送船団方式、お友達グループによる相乗りや持ちあげ合いのような研究スタイルが目につく。」(山田しょう2014「前期旧石器時代存否論争と珪岩製旧石器」:22.)


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