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世界の中の「日本考古学」(続々:WAC-8に至る道) [研究集会]

WAC-8に至るには、重要なマイル・ストーンがあった。それが10年前の「世界考古学会議中間会議 大阪大会2006」(WAC-IC OSAKA)である。中間会議2006大阪があったからこそ、本会議2016京都があったとも言えよう。
両者を比較し通時的に分析することで、世界考古学に対する日本考古学の変化についても、伺い知ることができる。

WAC-IC 2006の研究発表は、4日間(実質3日)の日程で、4会場、3テーマ、23セッション、160本の口頭発表、34枚のポスター発表であった。
WAC-8 2016の研究発表は、4日間(実質3日半)の日程で、29会場、15テーマ、159セッション、1477本の口頭発表、132枚のポスター発表であった。
10年を隔てて、規模はおよそ7~8倍になったとみてよいだろう。

テーマ1:過去との対話(39/66)
セッション1:環境 -自然と人間の共生-(4/6)
セッション2:比較 -隣接地間交渉の比較考古学-(7/11)
セッション3:黒曜石 -黒曜石と原産地をめぐる人類活動の諸相-(6/7)
セッション4:複雑系 -台頭してきた複雑系概念-(0/6)
セッション5:土器 -土器の多様な側面の探求-(8/8)
セッション6:狩猟民‐農耕民 -先史時代および歴史時代における狩猟採集民と農耕民との相互関係-(7/11)
セッション7:長距離 -遠隔地交渉と異文化共生-(7/9)
セッション8:韓国 -韓国とその隣接地域の考古学-(0/8) 

テーマ2:差異と共生(17/28)
セッション9:中央‐周縁 -国家形成期における中央と地方-(5/5)
セッション10:戦争 -過去と現在における戦争と暴力-(2/6)
セッション11:差別 -考古学から探る疎外・差別・身分-(5/6)
セッション12:ジェンダー -ジェンダーと共生-(5/5)
セッション13:表象 -超越する表象-(0/6)

テーマ3:遺産の形象(38/56)
セッション14:帝国主義 -学術的帝国主義からの脱却-(4/9)
セッション15:近代 -ポストモダン状況下の考古学-(5/7)
セッション16:災害 -文化財と災害-(5/5)
セッション17:情報 -情報考古学と共生-(7/7)
セッション18:倫理 -考古学の海外調査における倫理-(1/7)
セッション19:カンボジア -カンボジア現代社会における遺産の継承と文化遺産との共生-(4/4)
セッション20:公共 -パブリック考古学-(2/7)
セッション21:教育 -遺産の保護・考古学・教育-(2/8)
セッション22:学校 -学校と教育における考古学-(1/3)
セッション23:管理 -文化遺産の管理と活用-(7/9)

ポスター・セッション(27/34)

WAC-ICでの内容の多くは、WAC-8に引き継がれている。
セッション2「比較」はテーマ5、セッション7「長距離」はテーマ12、セッション10「戦争」はテーマ15、セッション15「近代」はテーマ3、セッション12「ジェンダー」はセッションT09-F、セッション16「災害」はテーマ13などなど。
すると10年前にはあったテーマが今回は特に見当たらないものと、前回はなかったが今回現れたテーマが浮かび上がる。
前者は、セッション3「黒曜石」、セッション4「複雑系」、セッション5「土器」など。
後者は、テーマ1「開発」、テーマ2「政治」、テーマ11「宗教」、テーマ14「芸術」など。

23セッションのうち、19セッションのオーガナイザーに日本人研究者が含まれている(83%)。
WAC-8では、159セッションのうち61セッションだったので(38%)、10年前は遥かに高い確率で日本人研究者がセッションをオーガナイズしていたことが確認できる。
そして日本人オーガナイザーのセッションに、今回のWAC-8よりも遥かに高い頻度で日本人研究者が集中していた、言い換えれば外国人オーガナイザーのセッションには殆ど参加していなかったことも確認される。
10年前のWAC-ICでの日本人発表数は、121/194=62%で、今回のWAC-8の352/1477=24%を遥かに上回る。当時のアウェイ感は、今回ほどではなかったということである。あるいは10年を経て「日本考古学」の「世界考古学」に対する対応力も多少の進展がみられるということだろうか。

10年前のWAC-ICで発表して、今回のWAC-8でも発表した日本人(と思われる)研究者は、以下の53人である(あいうえお順、敬称略)。
青山 和夫、五十嵐 彰、池谷 和信、石村 智、井上 智博、今津 節生、魚津 知克、大西 秀之、岡村 勝行、小野 林太郎、鐘ヶ江 賢二、金子 守恵、上條 信彦、川上 洋一、川宿田 好見、北川 淳子、木村ジュン、黒木 梨絵、後藤 明、小林 正史、斉藤 清秀、坂井 隆、佐々木 憲一、佐々木 由香、庄田 慎矢、高橋 龍三郎、田代 亜紀子、俵 寛司、辻田 淳一郎、中園 聰、長友 朋子、中西 裕美子、中村 大介、丹羽 崇史、能城 修一、端野 晋平、橋本 裕子、別所 秀高、細谷 葵、松田 陽、松本 啓子、松本 直子、丸井 雅子、溝口 孝司、光本 順、宮本 一夫、村木 誠、安田 喜憲、矢野 健一、山口 欧志、山崎 健、吉井 秀夫、若林 邦彦

ちなみに各大学の大学院生レベルのWAC-8への参加状況を調べるだけで、それぞれの大学の教育方針を明らかにすることもできるだろう。

要旨集についても、WAC-IC 2006は全ての発表について英文と日本文が対照して掲載されて170頁なのに対して、今回のWAC-8 2016では発表要旨は英文のみ、対訳の日本文はテーマおよびセッション要旨のみで425頁である。
あのタイトな編集スケジュールとボリュームからして、止むを得ない措置であろう。

いずれにせよ「日本考古学」の大きな遺産であることは、間違いない。


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