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大島2014『月と蛇と縄文人』 [全方位書評]

大島 直行2014『月と蛇と縄文人 -シンボリズムとレトリックで読み解く神話的世界観-』寿郎社

「…考古学の世界では出土品などの分類が目的化してしまい、ほかの学問の成果を取り入れて縄文人の精神性を明らかにするという作業を長い間怠ってきたのです。次から次と掘り出される資料の分類につねに翻弄されていて、その余裕がなかったともいえますが。
どんな学問もそうですが、考古学もまた「人間とは何か」を明らかにするためにあります。ですから縄文人についても、もっと人間としての側面から研究することが必要なことは明らかです。科学も文字もない社会で生きていくためには、もっぱら「人類の根源的なものの考え方」を用いて「世界(自然)を認識する」ことが必要だったはずです。」(6-7.)

著者は2月19日の公開討論会にわざわざ北海道から参加されて、励まされる意見を頂いた。
「合理的・科学的思考でものを考える、あるいは経済的価値観を至上とするような現代社会に生きる私たち」に対して刺激的で示唆に富むコメントだった。

「能登は、群馬県と岩手県から見つかった「ヘビのように蛇行した石剣」と「ヘビのように蛇行した石刀」を紹介しています(『縄文時代』)。このことが、全国からたくさん出てくる石棒や石剣、石刀はヘビをシンボライズしたもの、と考える大きなヒントとなりました。これがなければ、今なお私は直接的に男根を象徴したものと考え続けたに違いありません。能登のヒントのおかげで、私は、なぜ縄文人がお墓の死者に石棒や石剣を添えるかという謎も読み解くことができました。男根と理解されていた石棒や石剣、石刀は、実は再生のシンボルとしての蛇だったのです。」(117.)

石棒がヘビの象徴だとしたら「立てたのか、立てなかったのか」といった議論も根底から再検討しなければならなくなるだろう。
ヘビを立てる人は、いないのだから。

近著では、緑川東の大形石棒についても言及されている。
「緑川東遺跡の縄文人は、敷石住居の床に、再生のシンボルである蛇をレトリカルに表現した石棒を”並べるべくして並べた”のだと思います。そもそも敷石住居そのものが、再生のシンボルである子宮をレトリカルに表現した場所であり、そこに赤と緑の石棒を並置するということは、暮らすための家というよりは、まさに再生を祈る祭祀の場だったと考えられます。」(大島 直行2016『縄文人の世界観』国書刊行会:181.)

最近、近くの<遺跡>見学会の展示遺物解説のお手伝いをした。
展示された縄文遺物の中で、圧倒的に質問が集中したのが「土製円盤(土器片円盤)」であった。

「土製円盤(板):土器片を円形に整形した土製品。縄文時代の各時期・地域にみられる。大きさにもばらつきがあり規格性に乏しい。1cm前後から数cm程度で、10cmを超えるものはまれ。中央に孔をあけたものもあり、有孔円盤ないしは有孔土製円盤などとも呼ばれる。(中略)これらの用途として装身具や紡錘車などが考えられる。(中略)玩具や容器の栓、木製品の仕上げに用いる砥、土器づくりのときに素地に混和材として入れる土器片の細粒を削り取ったもの、などと考える諸説がある。」(大塚・戸沢編1996『最新 日本考古学用語辞典』柏書房:244.)

見学会でも「何に使ったのか、分からないんです」といった応答を繰り返したのだが。

「結論として土器片円盤は、縄文人にとっては、「蛇が縄文(縄模様)としてシンボライズされた土器のかけらである」ことに重要な意味があるのではないかと私は考えています。土器のかけらを円い形に整える(製品には三角形や四角形もあるが基本的には円)のは月の運行をシンボライズしているからではないかと思われるのです。」(144-145.)

最近、上野の科学博物館で開催された「ラスコー展」で「有孔骨製円盤」なる出土品が展示されていたことを知った。

「157 ウシ科の動物2頭が刻まれた円盤 マス・ダジル洞窟遺跡(フランス) 2万年~1万4500年前(マドレーヌ文化) フランス国立考古学博物館(サン=ジェルマン=アン=レー)所蔵
この円盤は、丸く切り取られた動物の肩甲骨で、中央に穴が開けれている。片面に左向きの牝ウシが前半身のみが表され、反対の面には同じ向きで仔ウシが刻まれている。円盤は、衣服のボタン、あるいは穴に紐を通し、回転させて遊ぶ玩具と考えられている。(五十嵐ジャンヌ)」(『世界遺産 ラスコー展』図録:126.)

遥かな時空を隔てて、共通する<もの>と<もの>。
当然のことながら、日本列島の旧石器時代にもこうした有機質な遺物が存在した可能性がある。
単なる「ボタン」や「玩具」では、説明がつかない。


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アマチュア

ちょっとお話から外れますが、縄文人と蛇のつながりは大変興味を持ちました。自分が十数年前購入した本に、青森と岩手の縄文時代住居跡床面から出土した土器に、蛇の骨が入っていたという記述があったのを思い出しました。たしか注口土器やつぼ型土器など祭祀に使用されたと考えられている土器だったと思います。
大島さんの本を購入して勉強してみたくなりました。
by アマチュア (2017-03-18 22:37) 

伊皿木蟻化(五十嵐彰)

考えなければならないのは、「人類の根源的なものの考え方」を根底に据えて考える限り、そうした考え方は「縄文人」に限定されることはないはずで「旧石器人」にも、そして日本列島だけでなくニュージーランドでもマダガスカルでも適用できるはずであるということです。
by 伊皿木蟻化(五十嵐彰) (2017-03-19 17:51) 

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