So-net無料ブログ作成
検索選択

五十嵐2017c「接合空間論」 [拙文自評]

五十嵐 2017c 「接合空間論 -<場>と<もの>の認識-」『理論考古学の実践』Ⅰ 理論編、安斎 正人 編、同成社:137-164.

「本稿では、接合という考古学的な空間事象が示す意味について考える。まず多様な接合様態について、水平方向の離散関係と垂直方向の重複関係に区分して、その全体像を確認する。次に石器および礫資料の実際の接合分布状況について、10m以上の長距離接合事例を中心に概観する。その際には特に「離散単独」という分布形態に着目する。さまざまな接合分布形態の内実を明らかにするために、異なる<場>から出土した2枚の剥片という最も単純な仮想例に製作と移動という基本モデルを組み合わせて実際の接合資料を説明する手立てとする。異なる場所から出土した資料が接合することによってもたらされる<場>と<もの>の相互関係が紡ぎだす豊かな語りについて考える。」(139.)

今日もどこかの整理事務所で、考古資料の接合作業が行われているに違いない。地道に、そしてひっそりと。
洗い・注記・計測そして接合、考古学を語る上で欠かせない要素である。しかしそのことが、研究の対象、研究集会の主題になることは殆どない。〇〇時代の〇〇土器については、そのことに特化した研究会がいくつもある。しかし考古資料全体を対象とするような「接合研究会」は存在しない。私だけが会員のヒトリ研究会である。

なぜだろうか?

「接合 せつごう refit 同一の原石から生じた残核・砕片・各種の剥片・石器類(個体別資料)がたがいにつながりあうこと。遺跡のなかで1つのブロック内に限られる接合、またブロック間にまたがる接合、さらに遠く離れた別々の遺跡の間での接合などがある。そうした接合によって、石器製作の工程を実際に観察できるとともに、同時に存在し原石や石器を交換しあったブロックや遺跡があったことがわかったり、同じ集団のどちらが移動元でどちらが移動先かを分析することも可能である。」(大塚・戸沢編1996『最新 日本考古学用語辞典』:182.)

接合資料は、石器だけではない。土器も木器も金属器もガラス器もありとあらゆる<もの>が対象である。しかしこの「用語辞典」の記述は、どうみても石器しか念頭に置かれていない。『最新 石器用語辞典』ではないはずなのだが。

こうした視野の狭さが接合研究の奥行きの深さ、可能性を見えにくくしているのではないか。

例えば、石器研究に限定しても、接合研究というジャンルの総量は使用痕跡研究の半分以下であろう。毎日どこかで接合作業がなされ、研究対象は日々増し加わり、その蓄積は誰も把握し難いほどなのに。高価な顕微鏡も面倒な比較試料の作成も必要ないのに。

なぜだろうか?

「「ただ接合すればよいというのではなく接合実測図や接合分布図を材料として何をいかにして見出していくのかという明確な意図が示される必要があろう」(五十嵐1998:121.)
自らが示した課題について20年弱の年月を経てようやく答えを出そうと試みた本論だが、はたして「明確な意図」を示すことができただろうか。「日本考古学」という地域考古学に自閉することなく、日本でもニュージーランドでもマダガスカルでも適用できる普遍的な議論の喚起と研究の深化を期したい。」(162.)

最終的な到達点は、「接合空間論」と「考古塁重論」を突き合わせることである。
これはあたかも「解剖台の上でのミシンと洋傘」のようなものである。
一見すると場違いな、何の関係もないように思われる2つの事柄。しかし<場>と<もの>という「関係の体系」を通じて見たときに、それまで無関係とも思われた事柄が鮮やかに変貌してくる。
そうしたヴィジョンを感じ取っていただければ幸いである。

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。