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ましこ2017『コロニアルな列島ニッポン』 [全方位書評]

ましこ ひでのり 2017 『コロニアルな列島ニッポン -オキナワ/オホーツク/オガサワラがてらしだす植民地主義-』三元社

いろいろな意味で、極めて重要な書籍である。そしてその緊急性もまた高いというべきであろう。

「本書の含意は単純明快です。「日本は戦後一貫して植民地であり、かつ植民地を全部放棄したわけではないという意味で、二重に植民地性をおびた空間だ」と。さらに、その基盤として、「日本」という実体(=時間上/空間上の連続体)が共同幻想にすぎず、たとえばヤマト王権の成立起源を確定するといった作業自体無意味という世界史的普遍性があると。当然、その内実(生活者/政治経済文化)はもとより、境界線自体が変動しつづけてきたわけで、いかなる実体視も科学をよそおっただけの本質主義=ガラパゴス的なイデオロギーにおちいるわけです。」(156-157.)

私から見れば、至極当然な真っ当な意見なのだが。
二重の意味でコロニアルな時空間において「ポストコロニアル」を唱える困難さを思い知る。

「われわれ日本人は、米軍主導の安保体制に明白に異をとなえないかぎり、オキナワの敵であり、植民主義者にほかなりません。親米保守がやめられない層も、そろそろ自分たちの「みにくい自画像」をかきはじめねばなりません。「無自覚に美化された自己像」によっぱらっている状況ではないことを理解しないかぎり、たとえば、中韓など東アジアなどから軽蔑されつづけるでしょうし、ヒロシマ/ナガサキなど「負の世界遺産」的空間を象徴として反核運動を展開しても、信用されないでしょう。」(160.)

ナショナリストあるいは右寄り保守とされる人々が、外国軍基地撤廃・安保条約廃止を唱えない不可思議さ。所詮は、自己陶酔ということなのか。

「わたしたちは、たとえば、明治維新期以来の「治外法権」だの「関税自主権」など「不平等条約改正」にとりくんだ政治家/官僚たちに感動したりしてきましたが、万年与党の自民党や官庁の洗脳工作によって、現状が植民地状況ではないかのように錯覚したままです。現実は、すでにみたとおり、日米地位協定の実態に明白なとおり、対等なパートナーといった表現が皮肉でしかない主従関係にあり、外交特権どころか、潜在的には日本列島上のあらゆる空間が治外法権化する構図にあるのです。裁判所は騒音被害ほか米軍による権利侵害についていくら訴訟をおこそうが、「第三者行為論」という論法で門前払いをくらわせつづけるでしょう(「安全性は保障されている」という結論ありきの原発関連訴訟と同質)。敗戦による占領状況が開始した時点を起点として現在も進行中の現実であるという点で、「治外法権」は「時代劇」ではなく、英語文法でいう「現在完了形」にたとえることができる構図といえます(「植民地化されてしまった(has been colonized)」といった具合に)。
その意味で、わたしたちは、日本国憲法や皇室典範など、基本法典の改正作業をめざす作業のまえに、まずは日米安保条約と日米地位協定という対米関係を直視し、中朝韓台ほか近隣諸地域との歴史認識のすりあわせに着手しなければならないでしょう。そういった基本的作業をおこたったままの改憲作業など、ナンセンスだとおもいます。なぜなら、これまでみてきたように、現実問題として日米安保条約/日米地位協定は日本国憲法の上位にあり、必要とあらば、航空法など国内法を無効化する存在ですし、日本国憲法の現代的意味は、アメリカや東アジア・東南アジア諸地域との友好関係と無関係には成立しないのだから。」(162-163.)

様々な諸事象を結び合わせて必然的に導き出されるこうした認識が広く共有されて「常識」と化したときに、すなわち一部統治者たちの価値観・歴史認識が「トンデモ化」された時に、変革は必然化されるだろう。

「対米従属」などという甘っちょろい用語ではなく、「傀儡政権」という現実に即した用語が前面(全面)に浮かび上がる時に。


タグ:植民地
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ましこ

ていねいなご紹介にあずかり、恐縮です。
貴ブログの読者のみなさんに関連のある事項としましては、以下の箇所かとおもいます。ギャラリーのみなさまにおかれましては、ご参考まで。

2-5 コロニアルな学界 75
【補論1:帝国日本によるアイヌ民族文化の動員とその忘却】 84
【補論2:帝国主義のコピーとしての学術的収奪の輸入】 85
by ましこ (2017-08-16 13:14) 

伊皿木蟻化(五十嵐彰)

独ボン大学のハンスディーター・ウールシュレーガー博士 
ドイツからの遺骨返還は、実際に海外から遺骨が返還されるという「前例」になった。返還式という成果を喜ぶだけでなく、さらに前進させなくてはいけない。たとえば英国ともアイヌ遺骨の返還協議を進めるべきだ。一方で、日本政府は国内にある他国の先住民の遺骨について、由来する国への返還に取り組む必要がある。相互返還をしなくては、日本がアイヌの遺骨返還を求める権利を失いかねない。【聞き手・中西啓介】
毎日新聞2017年8月11日 東京朝刊
京都大学が所蔵しているとされる1942年に出土した「陽高古城堡」の人骨は、今どこにどのような状態にあるのでしょうか? 本ブログ【2014-02-19】記事を御参照下さい。
by 伊皿木蟻化(五十嵐彰) (2017-08-16 17:40) 

ましこ

この記事でよろしいですね。
http://2nd-archaeology.blog.so-net.ne.jp/2014-02-19
by ましこ (2017-08-17 22:34) 

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