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赤松1967「はてしなき泥濘の道」 [論文時評]

赤松 啓介 1967 「はてしなき泥濘の道 -建国祭の頃の思い出-」『考古学研究』第13巻 第4号:18-32. 「はてしなき泥濘の道 2」同 第14巻 第1号:34-48. (2000『赤松啓介民俗学選集 第5巻 民俗学批評/同時代論』:248-304.所収)

「ごく一部には、皇国史観に積極的に妥協し追随し自らの科学性を犠牲にした研究者も生じたし、それと反対に皇国史観に公然と反対し考古学の科学性を主張して弾圧された研究者も現われたが、研究者の大勢は、現実から眼をそらし、思想性をぬきとることによって、個別的な考証、個々の事実に対する実証的形態的研究に沈潜する方向を歩んだ。」(近藤 義郎1964「戦後日本考古学の反省と課題」『日本考古学の諸問題』:312.)

戦時期の「日本考古学者」の生態に関する有名な「三類型」を提示する一文である。多数派の第三グループはもとより、第一グループについてもここ10年ほどで少しずつその実態が明らかにされてきた。しかし更に少数派の第ニグループについては、どうだろうか。かつては必読とされた本論についても、最近の若い研究者がどれほど知っているか心許なくなってきたので、改めて紹介する次第である。
未完であることを遺憾とする。

筆者の「考古学に夢を」という題名のエッセイについては、かつて紹介したことがある。
筆者の在りし日の画像については、こちらに。

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近藤1964「戦後日本考古学の反省と課題」 [論文時評]

近藤 義郎 1964 「戦後日本考古学の反省と課題」『日本考古学の諸問題』考古学研究会十周年記念論文集:311-338.

前々回の記事でその一部を引用して指摘したように、半世紀を経て少しも劣化しない、いやむしろその先見性により重要さが増しつつあるという稀有な今や古典とも言うべき論考である。
本論は、総括的な学史を述べた前半(一 戦前戦中の考古学、二 敗戦と考古学、三 反動的イデオロギーの復活)と個別的な成果と課題について論じた後半(四 登呂遺跡の発掘、五 先土器時代の発見と研究の進展、六 月の輪古墳の発掘、七 遺跡保護の運動)という大きく分けて二部構成になっているが、今回注目したのは「日本考古学」という用語の使い方(使われ方)についてである。
考古学に「日本」という接頭辞が付された用語、あるいはそれに更に「戦後」という時間限定用語が付された用語は、いったいどのような文脈で用いられているのだろうか。
そこから浮かび上がるある考え方について述べてみたい。

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パラドックス [雑]

ある宿舎の柱に掛かっていた、あるタペストリーから。 

私たちの時代の矛盾

大きくなった家、小さくなった家族
便利になって、時間がない
高学歴になり、感性は鈍く
知識は増し、判断力は衰え
専門家は増え、問題も増え
医療は進み、健康は損なわれる

月旅行はするが、新しい隣人に会うため道一つ渡ろうとしない
情報を蓄えコピーするためコンピュータを作り、
人とのコミュニケーションは低下する
量を重視し、質を軽視している

ファストフードの時代だが、消化不良
身体は大きくなったが、品性に欠ける
利益ばかり追い求め、人との繋がりは希薄

外から見える窓は多くのもので充ちているが、
部屋の中はスカスカ、これが私たちの時代

ダライ・ラマ14世

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梅原1947「現下の日本考古學」 [論文時評]

梅原 末治1947「現下の日本考古學 -その展望と将来の課題-」『人文』第1巻 第2号、人文科学委員会:45-57.

「考古學が古物を解釋する學問だとする為政者の誤った考えからして、實は過去十数年の激しかつた政治の學問に對する強壓下にあつて、この學ではさして研究上の自由を奪われることなく、関係者が基礎的な調査なり研究を続けることが出来たばかりでなく、一面強行された政治勢力の大陸なり南方への進出に便乗して、その活動の範囲をば是等の地方に及ぼした結果、今日では同地域ののこされた文化事業のやゝ見るべき業績の一とも言うべき趣をすら呈しているのである。彼の朝鮮並に南満洲に於ける我が考古學上の調査研究の廣い東亞考古學の成立への寄与の如きはその好例とせられる。か様な事情の下にあつた事が、いまや世情の一大變換期に際して、新たな一般の要求に應じて、歪んでいない幾何かの関係の知識を提供し得た所以なのであつた。たゞ考古學の取扱う對象にもとずくそれ自體の限界なり、またこの學問發達の迹を辿つて現状に及ぶの際、そこに今日あるを得しめた先學の數々の業績が思われると共に、いろいろと省みるべき點のあることが考えられて、それが學としての正しい発達の上に聯關する所の大なるものあることに思い及ぶのである。」(45-46. 下線は引用者、以下同)

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