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五十嵐2019a「旧石器接合個体2例」 [拙文自評]

五十嵐 2019a 「旧石器接合個体2例 -練馬区比丘尼橋遺跡C地点-」『研究論集』第33号、東京都埋蔵文化財センター:83-90.

現在整理作業中の練馬区比丘尼橋遺跡C地点の接合個体の一部を紹介した7頁ほどの「資料紹介」である。
2019年3月の時点で365個体の接合資料が得られているが、その中から注目すべき2例を紹介した。

1つ目は、Ⅳ層から出土した斧形石器に関連する接合個体である。斧形石器と言えば、前半期(Ⅹ層からⅨ層、せいぜいⅦ層)と相場が決まっているのに、これは後半期のⅣ層、それも平坦な裏面に接合する小形調整剥片が3枚、更に表面に残る礫面を除去しようと企図した裏面からの剥離によって意図しない末端肥厚剥片(ウートラパッセ)が生じて、器体の大半を損壊し破棄されたという「レア」ものである。
「アチャー」という旧石器人の悲嘆が、ビシビシと伝わってくる資料である。
実は本稿の挿図のために苦労して接合状態の実測図を仕上げた後に、表面に更に1枚調整剥片が接合することが判明したが、既に間に合わず。
「つきました!!」と嬉しそうに報告してくれる作業員の方に対して、実測・トレースをやり直さなければという思いが頭を駆け巡りつつ、「よかった!!」と心中とは相反する笑みを浮かべつつ応対する複雑な心境。

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タグ:旧石器 接合
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松島・木村編著2019『大学による盗骨』 [全方位書評]

松島 泰勝・木村 朗 編著 2019 『大学による盗骨 -研究利用され続ける琉球人・アイヌ遺骨-』耕文社

序言(3-8)は、一般財団法人 東アジア共同体研究所理事長という肩書の鳩山 友紀夫(由紀夫)である。

「私は2009年の所信表明演説において、「すべての人々が偏見から解放され、分け隔てなく参加できる社会、先住民族であるアイヌの方々の歴史や文化を尊重するなど、多文化が共生し、誰もが尊厳を持って、生き生きと暮らせる社会を実現することが、私の進める友愛政治の目標となります」と述べました。私は今、この演説には二点が欠けていたことを実感しています。一つはアイヌ民族だけでなく、琉球人も先住民族として加えていなければならなかったこと、二つめは尊厳を持って生き生きと暮らせる社会に留まらず、死してもなお尊厳を持って遇される社会を実現しなければならないことです。」(6.)

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加藤2018「先住民族の遺骨返還」 [論文時評]

加藤 博文 2018 「先住民族の遺骨返還 -先住民考古学としての海外の取り組み-」『先住民考古学シリーズ』第1集、北海道大学アイヌ・先住民研究センター先住民考古学研究室:1-71.

「本小論は、先住民族の文化遺産の返還の世界的な動向について、各国における事例を参照しながら、具体的な取組みの過程において確認された先住民族文化遺産をめぐる各国の法制度との関係性、返還過程において明らかとなった課題点を整理することを目指したものである。数世紀にわたり収集されてきた先住民族の文化遺産には、日用品から儀礼用具、そして先住民族の遺骨までが含まれている。本小論では、その中でも、とりわけ先住民族の祖先の遺骨や、それに関わる副葬品の返還を巡る取り組みと課題に焦点を当てた。その理由としては、21世紀に入り日本においても先住民族アイヌ自身による祖先の遺骨返還を求める動きが改めて訴訟も含めて顕在化してきていることがある。また過去の日本の大学研究機関によって研究目的で収集され、保管されてきたアイヌ民族の祖先の遺骨の今後の取り扱いについても早急に検討する必要が生じているためである。そしてなによりも、発掘調査において墓や遺骨の発掘に関わる考古学者や、出土人骨の分析に関わる生物考古学者(自然人類学者)にとって、国際的な動向を理解し、問題の所在と研究者の果たすべき責任を明確に自覚し、これからの日本における取り組みを真摯に検討することが急務と考えるためである。」(前言)

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考闘委1971『全国通信』第3号 [全方位書評]

全国考古学闘争委員会連合1971『全国通信』関東考古学学生連絡協議会編集局

「5・15関考協討論集会報告」(5・15討論集会実行委員会):1-4.

「5・15関考協討論集会は、5月3~4~5日にわたって展開された日本考古学協会解体闘争の地平をふまえて現在的な闘争を展望すべく設定されたものである。討論は文化財問題を含めた協会解体闘争の再度の位置付の確認から開始された。
その発足時より権力に保証された半封建的機構として無媒介的に存立していた日本考古学協会は、69年10月25日協会闘争・文化財破壊等を契機、媒介とし『研究者意識』を唯一その基盤においたブルジョワ利害関係から少数ボス支配=中央集権の解体、研究者の地域的分散化といった一定程度の流動化をみせている。
それは、日共=文全協一派を頂点とする部分による「社会的責任の遂行」といった欺瞞的近代化路線(改革原案の提出-採択)の推進であり一方、右翼反動による積年の「発掘公団構想」の実体化である。その内実は、日共=文全協の文化財保存運動を票田化という日共集約に向けた国民運動路線の一環として位置付け、純学問的研究を保証する考古学界のヘゲモニー掌握とを二重写しにした所の日共文化運動のブルジョワ改良主義の一環としてある飛鳥保存・風土記の丘構想・国立民族歴史博物館構想のまえに運動実体として包括されてしまっている。右翼反動の権力との同化はいうまでもない。しかしこの中にあって動揺をみせている地方研究者・研究団体の動きを見落とすことはできない。

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小田2018「骨から人へ」 [論文時評]

小田 博志 2018 「骨から人へ -あるアイヌ遺骨のrepatriationと再人間化-」『北方人文研究』第11号、北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター10周年記念特集号:73-94.

「RV33」という符号が書き込まれたアイヌ頭骨が長年ベルリンで収蔵されていた。「ルドルフ・ヴィルヒョウ・コレクション」という有名な人類学者の名前を冠した資料として「ベルリン人類学・民族学・先史学協会(BGAEU)」が管理していた。この遺骨は1879年にゲオルク・シュレージンガーというドイツ人によって札幌の墓地から持ち去られたものだった。以下は、ベルリン人類学・民族学・先史学協会の例会でシュレージンガーが行なった発表要旨の一部である。

「地表から約1.5フィート(45cm)下に、二人の遺体を示す多くの骨を私たちは見つけました。しかし、冒涜的な行為をしていると思われるおそれがあったので、私たちには夜の闇の中で急いでこの頭骨を入手するのがやっとでした。(Schlesinger,G. 1880 Fundberiht Uber der Ausgrabung eines Ainoschadels auf Yezo. Zeitschrift fur Ethnologie -Verhandungen der BGAEU:207)」(筆者訳:75.)

「思われる」とか「おそれがある」といった曖昧なものではなく、「冒涜的な行為」そのものであることは人目をはばかって夜間に掘り出した自らの行為が明瞭に語っている。
「RV33」は、多くの関係者の努力によって2017年に北海道に「帰還」した。

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フェイガン2019『若い読者のための考古学史』 [全方位書評]

ブライアン・フェイガン(広瀬 恭子訳)2019『若い読者のための考古学史』すばる舎
(BRIAN FAGAN 2018 A LITTLE HISTORY OF ARCHAEOLOGY. Yale University Press Little Histories.)

オーブリー、ヴィンケルマン、ベルツォーニ、シャンポリオン、ウィルキンソン、ボッタ、レイヤード、ローリンソン、ラッサム、スミス、スティーヴンズ、キャザウッド、フレア、スミス、ライエル、マケナリー、ペルト、ダーウィン、ハクスリー、デュボワ、スペンサー、タイラー、トムセン、ヴォルソー、スティーンストロプ、ラルテ、クリスティ、モルティエ、ケラー、ラムザウアー、モンテリウス、スクワイヤ、トマス、バンデリア、クッシング、ヒューイット、サウトゥオラ、カルタイヤック、ブルイエ、ブレーク、シュリーマン、レプシウス、コンツェ、クルツィウス、リヴァース、ピートリー、エヴァンズ、ベル、ホーズ、コルデヴァイ、アンドレ、ホガース、ウーリー、カーター、ハーバート、マッキーヴァ―、トンプソン、スタイン、チャイルド、ウーレ、キダー、ダグラス、ウィーラー、スチュワード、ウィリー、ジェニングズ、グリフィン、リビー、クラーク、ダート、リーキー、リーキー、ブレイドウッド、ケニヨン、バス、ヒューム、ケルソー、アルバ、チャベス、メラート、ホッダー、ステュークリー、ポティエ、フレッチャー、エヴァンズ、シーツ
*目次で「その章でとりあげるおもな登場人物」と記された人名リスト

半分も知らない。「若い読者」だけでなく「年取った読者」のためにも必読である。当然のことながら日本人はいない。

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大矢2017「児玉コレクションの収集経過とその周辺」 [論文時評]

大矢 京右 2017 「児玉コレクションの収集経過とその周辺」『市立函館博物館 研究紀要』第27号:1-40.

「本稿は、函館博物館所蔵児玉コレクションの学術的な位置づけを明確にするとともに、今後の利活用に資するため、収集の背景となる児玉作左衛門のライフヒストリーおよび児玉コレクションの成り立ちやその構成内容、そして函館博物館への寄託・寄贈経緯や管理状況等について、函館博物館で保管されている公文書類などの簿書や児玉家所蔵資料の調査、さらに文献の調査およびフィールドワーク、そして関係者への聞き取り調査などをとおして判明した事実について紹介するものである。」(1.)

今まで個別の目録などでその一部を知ることができたが、その収集経緯・構成内容・現状などの総体が初めてまとめられた。コレクションの今後の取り扱いすなわち「返すべきものを返す」作業に先だって、欠かせない重要な成果である。

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米村編1949『北海道先史学十二講』 [全方位書評]

米村 喜男衛 編1949『北海道先史学十二講』北方書院

考古學の意義(駒井 和愛:7-17.)
考古學と美術(関野 雄:19-30.)
北海道の先史時代(河野 廣道:31-43.)
貝塚と骨角器(大場 利夫:45-63.)
考古學研究の實例(米村 喜男衛:65-83.)
言語と文化史(知里 眞志保:85-93.)
北海道の住居趾(名取 武光:95-101.)
北海道の先住民族(児玉 作左衛門:103-115.)
國史と考古學(斉藤 忠:117-126.)
北海道史について(高倉 新一郎127-142.)
モヨロ貝塚人(伊藤 昌一:143-152.)
考古學雑感(原田 淑人:153-157.)
モヨロ貝塚を探る -モヨロ貝塚調査團員座談會-(伊藤・大場・河野・児玉・駒井・関野・米村:159-174.)

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男性・男性性の批判的研究 [論文時評]

最新のジェンダー研究は、CSMM(Critical Studies on Men and Masculinities:男性及び男性性に関する批判的研究)である。
マスキュリニティ(男性性)については、1年ほど前に紹介した【2017-12-16】。
「男性性」とは「男らしさ」といった意味であり、こなれない訳語である。
『現代思想』の最新号が「男性学の現在 -<男>というジェンダーのゆくえ-」という特集で、最近の動向をまとめている。
特にスティーヴ・ガーリック(清水 知子訳)「自然の再来 -フェミニズム、覇権的男性性、新しい唯物論-」:180-201.が、CSMMと新しい唯物論の相互関係について学ぶところが多い。

「今日の重要な論点は新しい唯物論の理論を男性性研究のなかにどう組み込むかということだ。このようなプロジェクトはCSMMと現代のフェミニズム理論の関係を再検討する機会を提供し、とくに両方の作業体系における自然の位置づけについて考える機会をもたらしている。新しい唯物論は社会構築主義という強固な形式との関係を断ち切りながら、ポスト構造主義理論の洞察を組み込んでおり、CSMMにおける強力な唯物論の伝統とフェミニズム唯物論との結びつきを強化する手段を提示している。」(181.)

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山本2019『住居の廃絶と儀礼行為』 [全方位書評]

山本 暉久 2019『住居の廃絶と儀礼行為』六一書房

「緑川東問題2019(その1)」でもある。

「ここで五十嵐彰の見解について触れてみる。五十嵐は自身のブログを含めてこの問題についてこれまで多数論じてきている。その論点は、「石棒が置かれていた場所には石棒設置以前に敷石が存在し、石棒を設置する際に敷石が「取り除かれた」とする根拠は、何だろう?」(五十嵐2016b:1頁)という疑問に導かれたものであるが、そもそも石棒が並置された位置には敷石はなかった可能性はないのだろうか。」(266.)

引用箇所は、「第5章 石棒祭祀の終焉と廃屋儀礼 第4節 その後の石棒研究をめぐって -石棒祭祀と柄鏡形(敷石)住居-」の部分にあるが、その多くは「緑川東問題2018(その3)」で論評した山本2017「柄鏡形(敷石)住居址研究をめぐる近年の動向について」から流用した文章であり、その中の加筆された箇所である。

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考古学・人類学とアイヌ民族 -ヒトと暮らしを探る- [研究集会]

考古学・人類学とアイヌ民族 -ヒトと暮らしを探る-

日時:2019年1月27日(日)10:00~15:00
場所:東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター東京 国際会議室
主催:日本人類学会
協賛:北海道アイヌ協会・日本考古学協会
後援:文部科学省(予定)

10:00-10:05 開会挨拶(篠田 謙一)
10:05-10:10 趣旨説明(近藤 修)
10:10-10:50 骨からわかるアイヌの暮らし(近藤 修)
10:50-11:30 古代ゲノムから見た東ユーラシア基層集団~アイヌ民族の位置を展望する(太田 博樹)
11:30-12:10 考古資料からのアイヌ文化の胎動 -厚真町の発掘事例-(乾 哲也)
13:10-13:50 アイヌ民族の酒とタバコ(関根 達人)
13:50-14:55 討論 コメンテーター(阿部 一司・佐藤 幸雄)、司会(石田 肇)
14:55-15:00 閉会挨拶(谷川 章雄)

アイヌの人々は、北海道を中心に日本列島北部周辺に暮らし、言語や習俗など文化の独自性を有する先住民族です。明治時代から人類学や考古学による研究が行われており、近年の遺伝子分析や大規模な発掘調査により新たな歴史像が見えてきました。本講演会では最新の人類学や考古学の研究成果を紹介するとともに、今後の研究のあり方について考えたいと思います。(案内チラシより)

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駒井 和愛(1905-1971) [学史]

「…いまやわが国が東亜考古学界にあって指導的立場にあることはとうていこれを否定することはできない。まことにわが国の東亜考古学界はきわめて順調な歩みを続けて来たものと言うべきであろう。」(駒井 和愛1938「寥たる原理的研究」『帝大新聞』、1977『中国都城・渤海研究』雄山閣:283-285所収)

「忌憚なく言えば、今までの日本は余りにも文化ということ、なかんずく学術について無関心でありすぎた。大げさに言えば世界の文化国のうちでわが国ほど、為政者も一般人も学問を尊重すべきことを知らないところは少ないと言ってよい。」(駒井 和愛1946「東亜考古学の将来」『ロゴス』第1巻 第1号、1977『中国都城・渤海研究』雄山閣:285-287. 殆ど同文が1948『日本古代と大陸文化』野村書店の「緒説」に流用されている)

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日本考古学協会編2018『日本考古学・最前線』 [全方位書評]

日本考古学協会編 2018 『日本考古学・最前線』雄山閣

 総説(谷川 章雄)
第1章 中の文化
 旧石器時代(佐野 勝宏)
 縄文時代(小林 謙一)
 弥生時代<西日本>(吉田 広)
 弥生時代<東日本>(石川 日出志)
 古墳時代<西日本>(辻田 淳一郎)
 古墳時代<東日本>(若狭 徹)
 古代<西日本>(高橋 照彦)
 古代<東日本>(眞保 昌弘)
 中・近世(堀内 秀樹)
 近・現代(櫻井 準也)
第2章 北の文化と南の文化
 北海道(高倉 純)
 南島・沖縄(宮城 弘樹)
第3章 外国の考古学
 中国(角道 亮介)
 朝鮮半島(井上 主税)
 北アジア(福田 正宏)
 東南アジア(田畑 幸嗣)
 アメリカ(鶴見 英成)
第4章 考古学と現代
 年代測定・食性分析・遺伝人類学(國木田 大)
 動植物・資源(工藤 雄一郎)
 保存科学(建石 徹)
 遺跡と社会(岡村 勝行)
 災害と考古学(渋谷 孝雄)

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櫻井2018「近・現代」 [論文時評]

櫻井 準也 2018 「近・現代」『日本考古学・最前線』日本考古学協会編、雄山閣:122-134.

抜き刷りを頂いた。有難いことである。

まずは事実認識の違いから。

「そして、1998年の文化庁次長通知『埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について』において、埋蔵文化財として扱うべき遺跡の範囲として、中世までの遺跡については「原則として対象とする」とされ、近世の遺跡については「地域において重要なもの」、近・現代の遺跡については「地域において特に重要なもの」を対象とすることができるとされた。」(123.)

「1)埋蔵文化財として扱う範囲に関する原則
 ① おおむね中世までに属する遺跡は、原則として対象とすること。
 ② 近世に属する遺跡については、地域において必要なものを対象とすることができること。
 ③ 近現代の遺跡については、地域において特に重要なものを対象とすることができること。
『埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について(通知)』庁保記第75号
①「中世以前」を骨格として、②「近世」では「必要なもの」という「必要基準」が導入され、なおかつ「…ができる」という「許認可」が与えられている。さらに③「近現代」では「特に」という副詞が付され、「必要」が「重要」に置き換えられている。「必要」と「重要」の違いについて当該文章の作成者がどこまで勘案したかは不明であるが、大まかには「必要」とは「欠くことのできない、なくてはならない」という意で(例えば「必要条件」)、「重要」とは「大事なこと、大切なこと」という意で(例えば「重要文化財」)、「重要」は「必要」より1ランク下位の意味で用いられていることは容易に推測される。」(五十嵐2008「「日本考古学」の意味機構」『考古学という可能性 -足場としての近現代-』:13-32.)

20年前に示された「必要」と「重要」の違いに拘ったのは、10年前のことである。

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寒中見舞2019 [雑]

寒中お見舞い申し上げます。

結果が良ければ、それで良い。内容は問わない。
そんな風潮が蔓延しているような気がします。
そんなことを考えさせられたのは、ロシアで開催されたサッカー・ワールドカップ日本代表第3戦の対ポーランド戦での出来事でした。

0-1で負けているにも関わらず、得失点差や警告数の多少の違いによって、このまま何も起こらなければ次のステージに進めると分かって、日本の監督はただ時間を費やすためだけに、選手たちに自陣でのボール回しを指示したのでした。

私は監督の指示に逆らって戦う姿勢を示す選手が誰一人としていなかったことを、心より残念に思います。

 

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村田2017「発掘調査報告書のありかた」 [論文時評]

村田 文夫 2017 「発掘調査報告書のありかた」『二十一世紀考古学の現在 -山本輝久先生古稀記念論集-』六一書房:711-720.

「本稿では、これまで必要に応じて拝読し、多くの学恩をいただいたいくつかの発掘調査報告書を俎上に載せるが、そこから学問的な論争を挑むつもりはない。発掘報告書刊行の本来的なありかたは、将来にわたって学的作業に供せられる基礎的な情報の提示であるから、事実記載などにはどのような心くばりが必要なのか、そのあたりを検証するのが目的である。」(711.)

として、『通論考古学』(濱田1922)から諸原則を確認して、神奈川県川崎市における橘樹郡衙遺跡群に関わる幾つかの問題を指摘している。

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矢島2018「旧石器遺跡捏造問題」 [捏造問題]

矢島 國雄 2018 「旧石器遺跡捏造問題」『日本考古学』第47号、設立70周年特集号 日本考古学と日本考古学協会1999~2018年:9-14.

「問題の発端は、2000年11月5日の毎日新聞の報道で、東北旧石器文化研究所(理事長:鎌田俊昭)が行っていた宮城県上高森の発掘調査における藤村新一の捏造現場のスクープだった。その後の検証調査で、藤村新一がかかわった座散乱木以来のほぼ全てにおいて捏造が行われていたことが確認された大事件であった。」(9.)

自らも深く関わった全国的な学会組織が、設立70周年を記念する事業の一環として「最も衝撃的な出来事」(谷川章雄2018「総説 -転換期を迎えた日本考古学と日本考古学協会-」:3.)として発覚後18年目に記された文章である。

「関係者との面談、特に藤村との面談を通じて座散乱木以来の全ての前中期旧石器遺跡が捏造の産物であることがはっきりする。」(12.)

「ほぼ全て」なのか「全て」なのか? その違いは、思っている以上に大きい。

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西川1966「在日朝鮮文化財と日本人の責務」 [論文時評]

西川 宏 1966 「在日朝鮮文化財と日本人の責務」『歴史地理教育』第116号:1-13.

「1965年11月12日未明、衆議院本会議において佐藤内閣は日韓基本条約の採決なるものを強行した。11月6日の特別委員会での暴挙といい、あの「韓国」国会での朴政権の暴挙と全く同じやり方で、日本でも事が運ばれているのである。
ところで、国会内外において各方面からこの条約、諸協定の本質と多くの重要な問題点について、指摘され追究がなされている中で、一つだけとり残された問題がある。在日文化財の返還問題がそれである。ファッショ的なやり方で強引に批准に持ち込もうとされている日韓条約案件の中に、『文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定』とその『付属書』及び『合意議事録』というのがあるが、これは日本にある膨大な朝鮮文化財の中から、日本政府が選び出した359件のものを、「日韓間の友好関係の増進等を考慮し、両国の国交正常化に際し、文化協力の一環として引き渡す」ということに決めたものである。しかしこの条文にもられた美辞麗句は、単なる修飾に過ぎないものであって、この協定の本質は、在日朝鮮文化財の返還問題を、全朝鮮民族の意向を全く無視し、李承晩以来の「韓国」政府の要求をも踏みにじり、一方的に日本政府の方針を貫くことによって、解消してしまおうとしているところにある。(中略)

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タグ:文化財返還
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対馬仏像返還問題に関する釜山ワークショップ(予告) [研究集会]

対馬仏像返還問題に関する釜山ワークショップ(市民対話集会)

日時:2018年11月24日(土)13:00~17:00
会場:国際ライオンズ協会 釜山支部 別館(韓国 釜山広域市 東区 凡一2洞)
主催:韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議

【呼びかけ文】
今年は1998年に小渕首相と金大中大統領が発表した「日韓共同宣言」から20年目の年です。他方2012年10月に対馬から仏像二体が盗まれる事件が起きてから6年が経過しました。犯人は逮捕されて判決を受けて刑に服したものの、二体の仏像の内の一体は今も韓国に留められて、引き渡しを求める浮石寺が起こした訴えによって大田高等法院で審理が行われています。事件発生からこの問題の混迷が日韓関係にネガティブな影響を与え、とくに粘り強く文化財返還要求運動を続けてきた日韓双方の市民グループに深刻なダメージを与えています。問題が長引き、両国間の新たなトゲとなっている現状を憂慮します。
そこで、日本への返還を求める対馬の観音寺、日本への返還に反対し自らの所有を主張する浮石寺の両当事者ではなく、市民の立場でこの問題をどう考えるべきなのか、専門家と共に率直に情報・意見を交換する公開の座談会を開催し、お互いの理解を深めて交流したいと思います。市民レベルでは初めての試みとなります。
ご参加・ご協力をお願いいたします。
 

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津田1946「建國の事情と萬世一系の思想」 [論文時評]

津田 左右吉 1946 「建國の事情と萬世一系の思想」『世界』第4号:29-54.(1947『日本上代史の研究』岩波書店、1986『津田左右吉全集』第3巻 岩波書店、2006『津田左右吉歴史論集』岩波文庫所収)

「國民みづから國家のすべてを主宰すべき現代に於いては、皇室は國民の皇室であり、天皇は「われらの天皇」であられる。「われらの天皇」はわれらが愛さねばならぬ。國民の皇室は國民がその懐にそれを抱くべきである。二千年の歴史を國民と共にせられた皇室を、現代の國家、現代の國民生活に適応する地位に置き、それを美しくし、それを安泰にし、そうしてその永久性を確實にするのは、国民みづからの愛の力である。國民は皇室を愛する。愛するところにこそ民主主義の徹底したすがたがある。國民はいかなることをもなし得る能力を具へ、またそれをなし遂げるところに、民主政治の本質があるからである。そうしてまたかくのごとく皇室を愛することは、おのづから世界に通ずる人道的精神の大なる発露でもある。」(54.)

李 成市氏【2018-10-20】に導かれて、改めて津田1946を読む。
戦時期に超国家主義者から攻撃された歴史学者の戦後の第一声ともいうべき論考の結論部分であるが、あからさまな天皇主義者の信仰告白としか捉えられないだろう。極東軍事裁判の開廷を控えていたという時代状況を考慮しても、これでは「日本史の研究における科学的方法」という論題で原稿を依頼した編集者が当惑するのも当然である。そのため掲載誌の巻末に「編輯者」名義の「津田博士「建國の事情と萬世一系の思想」の発表について」(128-135.)と題する長文の解説が掲載されることになる。

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