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日本考古学協会編2018『日本考古学・最前線』 [全方位書評]

日本考古学協会編 2018 『日本考古学・最前線』雄山閣

 総説(谷川 章雄)
第1章 中の文化
 旧石器時代(佐野 勝宏)
 縄文時代(小林 謙一)
 弥生時代<西日本>(吉田 広)
 弥生時代<東日本>(石川 日出志)
 古墳時代<西日本>(辻田 淳一郎)
 古墳時代<東日本>(若狭 徹)
 古代<西日本>(高橋 照彦)
 古代<東日本>(眞保 昌弘)
 中・近世(堀内 秀樹)
 近・現代(櫻井 準也)
第2章 北の文化と南の文化
 北海道(高倉 純)
 南島・沖縄(宮城 弘樹)
第3章 外国の考古学
 中国(角道 亮介)
 朝鮮半島(井上 主税)
 北アジア(福田 正宏)
 東南アジア(田畑 幸嗣)
 アメリカ(鶴見 英成)
第4章 考古学と現代
 年代測定・食性分析・遺伝人類学(國木田 大)
 動植物・資源(工藤 雄一郎)
 保存科学(建石 徹)
 遺跡と社会(岡村 勝行)
 災害と考古学(渋谷 孝雄)

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櫻井2018「近・現代」 [論文時評]

櫻井 準也 2018 「近・現代」『日本考古学・最前線』日本考古学協会編、雄山閣:122-134.

抜き刷りを頂いた。有難いことである。

まずは事実認識の違いから。

「そして、1998年の文化庁次長通知『埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について』において、埋蔵文化財として扱うべき遺跡の範囲として、中世までの遺跡については「原則として対象とする」とされ、近世の遺跡については「地域において重要なもの」、近・現代の遺跡については「地域において特に重要なもの」を対象とすることができるとされた。」(123.)

「1)埋蔵文化財として扱う範囲に関する原則
 ① おおむね中世までに属する遺跡は、原則として対象とすること。
 ② 近世に属する遺跡については、地域において必要なものを対象とすることができること。
 ③ 近現代の遺跡については、地域において特に重要なものを対象とすることができること。
『埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について(通知)』庁保記第75号
①「中世以前」を骨格として、②「近世」では「必要なもの」という「必要基準」が導入され、なおかつ「…ができる」という「許認可」が与えられている。さらに③「近現代」では「特に」という副詞が付され、「必要」が「重要」に置き換えられている。「必要」と「重要」の違いについて当該文章の作成者がどこまで勘案したかは不明であるが、大まかには「必要」とは「欠くことのできない、なくてはならない」という意で(例えば「必要条件」)、「重要」とは「大事なこと、大切なこと」という意で(例えば「重要文化財」)、「重要」は「必要」より1ランク下位の意味で用いられていることは容易に推測される。」(五十嵐2008「「日本考古学」の意味機構」『考古学という可能性 -足場としての近現代-』:13-32.)

20年前に示された「必要」と「重要」の違いに拘ったのは、10年前のことである。

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寒中見舞2019 [雑]

寒中お見舞い申し上げます。

結果が良ければ、それで良い。内容は問わない。
そんな風潮が蔓延しているような気がします。
そんなことを考えさせられたのは、ロシアで開催されたサッカー・ワールドカップ日本代表第3戦の対ポーランド戦での出来事でした。

0-1で負けているにも関わらず、得失点差や警告数の多少の違いによって、このまま何も起こらなければ次のステージに進めると分かって、日本の監督はただ時間を費やすためだけに、選手たちに自陣でのボール回しを指示したのでした。

私は監督の指示に逆らって戦う姿勢を示す選手が誰一人としていなかったことを、心より残念に思います。

 

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村田2017「発掘調査報告書のありかた」 [論文時評]

村田 文夫 2017 「発掘調査報告書のありかた」『二十一世紀考古学の現在 -山本輝久先生古稀記念論集-』六一書房:711-720.

「本稿では、これまで必要に応じて拝読し、多くの学恩をいただいたいくつかの発掘調査報告書を俎上に載せるが、そこから学問的な論争を挑むつもりはない。発掘報告書刊行の本来的なありかたは、将来にわたって学的作業に供せられる基礎的な情報の提示であるから、事実記載などにはどのような心くばりが必要なのか、そのあたりを検証するのが目的である。」(711.)

として、『通論考古学』(濱田1922)から諸原則を確認して、神奈川県川崎市における橘樹郡衙遺跡群に関わる幾つかの問題を指摘している。

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矢島2018「旧石器遺跡捏造問題」 [捏造問題]

矢島 國雄 2018 「旧石器遺跡捏造問題」『日本考古学』第47号、設立70周年特集号 日本考古学と日本考古学協会1999~2018年:9-14.

「問題の発端は、2000年11月5日の毎日新聞の報道で、東北旧石器文化研究所(理事長:鎌田俊昭)が行っていた宮城県上高森の発掘調査における藤村新一の捏造現場のスクープだった。その後の検証調査で、藤村新一がかかわった座散乱木以来のほぼ全てにおいて捏造が行われていたことが確認された大事件であった。」(9.)

自らも深く関わった全国的な学会組織が、設立70周年を記念する事業の一環として「最も衝撃的な出来事」(谷川章雄2018「総説 -転換期を迎えた日本考古学と日本考古学協会-」:3.)として発覚後18年目に記された文章である。

「関係者との面談、特に藤村との面談を通じて座散乱木以来の全ての前中期旧石器遺跡が捏造の産物であることがはっきりする。」(12.)

「ほぼ全て」なのか「全て」なのか? その違いは、思っている以上に大きい。

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西川1966「在日朝鮮文化財と日本人の責務」 [論文時評]

西川 宏 1966 「在日朝鮮文化財と日本人の責務」『歴史地理教育』第116号:1-13.

「1965年11月12日未明、衆議院本会議において佐藤内閣は日韓基本条約の採決なるものを強行した。11月6日の特別委員会での暴挙といい、あの「韓国」国会での朴政権の暴挙と全く同じやり方で、日本でも事が運ばれているのである。
ところで、国会内外において各方面からこの条約、諸協定の本質と多くの重要な問題点について、指摘され追究がなされている中で、一つだけとり残された問題がある。在日文化財の返還問題がそれである。ファッショ的なやり方で強引に批准に持ち込もうとされている日韓条約案件の中に、『文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定』とその『付属書』及び『合意議事録』というのがあるが、これは日本にある膨大な朝鮮文化財の中から、日本政府が選び出した359件のものを、「日韓間の友好関係の増進等を考慮し、両国の国交正常化に際し、文化協力の一環として引き渡す」ということに決めたものである。しかしこの条文にもられた美辞麗句は、単なる修飾に過ぎないものであって、この協定の本質は、在日朝鮮文化財の返還問題を、全朝鮮民族の意向を全く無視し、李承晩以来の「韓国」政府の要求をも踏みにじり、一方的に日本政府の方針を貫くことによって、解消してしまおうとしているところにある。(中略)

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タグ:文化財返還
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対馬仏像返還問題に関する釜山ワークショップ(予告) [研究集会]

対馬仏像返還問題に関する釜山ワークショップ(市民対話集会)

日時:2018年11月24日(土)13:00~17:00
会場:国際ライオンズ協会 釜山支部 別館(韓国 釜山広域市 東区 凡一2洞)
主催:韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議

【呼びかけ文】
今年は1998年に小渕首相と金大中大統領が発表した「日韓共同宣言」から20年目の年です。他方2012年10月に対馬から仏像二体が盗まれる事件が起きてから6年が経過しました。犯人は逮捕されて判決を受けて刑に服したものの、二体の仏像の内の一体は今も韓国に留められて、引き渡しを求める浮石寺が起こした訴えによって大田高等法院で審理が行われています。事件発生からこの問題の混迷が日韓関係にネガティブな影響を与え、とくに粘り強く文化財返還要求運動を続けてきた日韓双方の市民グループに深刻なダメージを与えています。問題が長引き、両国間の新たなトゲとなっている現状を憂慮します。
そこで、日本への返還を求める対馬の観音寺、日本への返還に反対し自らの所有を主張する浮石寺の両当事者ではなく、市民の立場でこの問題をどう考えるべきなのか、専門家と共に率直に情報・意見を交換する公開の座談会を開催し、お互いの理解を深めて交流したいと思います。市民レベルでは初めての試みとなります。
ご参加・ご協力をお願いいたします。
 

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津田1946「建國の事情と萬世一系の思想」 [論文時評]

津田 左右吉 1946 「建國の事情と萬世一系の思想」『世界』第4号:29-54.(1947『日本上代史の研究』岩波書店、1986『津田左右吉全集』第3巻 岩波書店、2006『津田左右吉歴史論集』岩波文庫所収)

「國民みづから國家のすべてを主宰すべき現代に於いては、皇室は國民の皇室であり、天皇は「われらの天皇」であられる。「われらの天皇」はわれらが愛さねばならぬ。國民の皇室は國民がその懐にそれを抱くべきである。二千年の歴史を國民と共にせられた皇室を、現代の國家、現代の國民生活に適応する地位に置き、それを美しくし、それを安泰にし、そうしてその永久性を確實にするのは、国民みづからの愛の力である。國民は皇室を愛する。愛するところにこそ民主主義の徹底したすがたがある。國民はいかなることをもなし得る能力を具へ、またそれをなし遂げるところに、民主政治の本質があるからである。そうしてまたかくのごとく皇室を愛することは、おのづから世界に通ずる人道的精神の大なる発露でもある。」(54.)

李 成市氏【2018-10-20】に導かれて、改めて津田1946を読む。
戦時期に超国家主義者から攻撃された歴史学者の戦後の第一声ともいうべき論考の結論部分であるが、あからさまな天皇主義者の信仰告白としか捉えられないだろう。極東軍事裁判の開廷を控えていたという時代状況を考慮しても、これでは「日本史の研究における科学的方法」という論題で原稿を依頼した編集者が当惑するのも当然である。そのため掲載誌の巻末に「編輯者」名義の「津田博士「建國の事情と萬世一系の思想」の発表について」(128-135.)と題する長文の解説が掲載されることになる。

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阿子島・溝口2018『ムカシのミライ』 [全方位書評]

阿子島 香・溝口 孝司(監修)2018『ムカシのミライ -プロセス考古学とポストプロセス考古学の対話-』勁草書房

およそ2年前(2016年6月5日)に東京で行われた対談記録(第2章:ムカシのミライ:プロセス考古学×ポストプロセス考古学:21-124.))を中心に編まれた論集である。
仕掛け人は「歴史科学諸分野の連携による文化進化学の構築」研究プロジェクトに関わる人びとのようである。

対談の半ば辺りで、仕掛け人からの「注意点」が対談者によって「披露」されている。
阿子島:今日の対談の打ち合わせはしていないのですが、注意点があってですね、ちょっとだけ披露したいと思います。(中略)「日本考古学は」という表現は、あえて避けるということでした。あとは、わが国の悪口ばかり言わないとかですね。もう一つ、横文字はできるだけ日本語に直して話すこと。翻訳できない場合は、その言葉を説明するという、配慮がありました。この場でちょっと披露してしまいましたが。」(97.)

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金子 文子(1903-1926) [雑]

「「君らと妥協する」「改心して社会に順応して生きる」今となって君らと妥協ができるならば、私はね、社会にいた時、すでに妥協していたはずです。君らのお説教は聞かなくともそのくらいの知恵はありました。このくらいのことは覚悟の上です。なにとぞご遠慮なくご自由に。私もね、実は今一度出たいのです。でそうするためには「改心しました」と頭を下げて一札入れさえすればうまく行くことは知っています。
だがね、将来の自分を生かすために現在の自分を殺すことは、私は断じてできないのです。
お役人方君らの前に改めて勇敢に宣言しましょう。
「私はね、権力の前に膝折って生きるよりは、むしろ死してあくまでも自分の裡に終始します。それがお気に召さなかったら、どこなりと持って行って下さい。私は決して恐ろしくないのです。
これが、昔も今も変わらぬ私の心持ちであります。」「第三回被告人訊問調書(1924年1月22日)東京地方裁判所」(鈴木裕子編2006『[増補新版]金子文子 わたしはわたし自身を生きる』梨の木舎:304.)

1923年の朝鮮人・中国人大量虐殺事件の要因を一緒に起訴された朝鮮人被告に負わせるために、日本人被告を何とか改心させようとする訊問に対する応答である。
この時、被告はわずか21才。こうしたことが何度も繰り返される。

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文化財でつなぐ日韓の未来 [研究集会]

日韓共同宣言20周年 文化財でつなぐ日韓の未来
日時:2018年10月21日(日)10:00~18:00
場所:東京大学 駒場キャンパス 18号館ホール
主催:東京大学 韓国学研究センター、韓国・国外所在文化財財団

基調講演
 韓・日間における歴史認識問題と文化財問題(李 泰鎮:前ソウル大学校)
 日韓文化財の諸問題(早乙女 雅博:前東京大学)
第1セッション「日韓文化財問題と専門家の役割」
 日本所在朝鮮文化財と専門家セミナーの役割(長澤 裕子:東京大学)
 日韓文化財返還問題の現況と展望(柳 美那:国民大学校)
 日韓文化財問題の解決と国外所在文化財財団の役割(金 相燁:国外所在文化財財団)
 討論(吉澤 文寿:新潟国際情報大学)
特別講演
 日韓国交正常化50周年記念特別展「ほほえみの御仏 -二つの半跏思惟像-」の経験から
 (李 栄薫:前国立中央博物館、大橋 一章:前早稲田大学)
第2セッション「日韓文化財展示及び学術交流」
 日韓文化財展示交流現況と課題(崔 善柱:国立中央博物館)
 韓国文化財の日本展示と日韓協力(杉山 享司:日本民藝館)
 文化財関連日韓学術交流の現況(六反田 豊:東京大学)
 討論(片山 まび:東京芸術大学)
第3セッション「日韓文化財問題に関する動向」
 不法搬出文化財の返還に関する韓国と日本の法的現況(宋 鎬煐:漢陽大学校)
 日韓文化財問題と市民社会を考える(有光 健:韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議)
 日韓文化財問題におけるメディアの動向及び今後の課題(出石 直:日本放送協会)
 討論(吉 倫享:ハンギョレ新聞)
総合討論
 李 成市(早稲田大学)、外村 大(東京大学)、大澤 文護(千葉科学大学)、吉澤 文寿(新潟国際大学)、片山 まび(東京芸術大学)、康 成銀(朝鮮大学校)、吉 倫享(ハンギョレ新聞)

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李2018『闘争の場としての古代史』 [全方位書評]

李 成市(り そんし) 2018 『闘争の場としての古代史 -東アジア史のゆくえ-』岩波書店

「交流の物語は、往々にして自己については競って語るが、他者については自己の延長か操作の対象でしかない。かつての日鮮同祖論は、朝鮮を古来、日本の延長で捉えようとしたが、それと現今の南北朝鮮における渡来人の過大な歴史的評価は対応関係にあるといえよう。(中略)
国家の物語とは、国家間の垣根を高くするものであり、国家の物語の相克は、相互理解を隔て、そうした垣根を益々高くせざるをえない。そもそも、それは、自己と他者とを隔てる内部の言説だからである。国民国家はすでに耐用年数を超えていると言われて久しいが、19世紀に創出された国民国家の物語は依然として生き延び、むしろ東アジア諸国間では物語の相克のなかで強化されている感なしとしない。」(16-17.)

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金子2017『何が私をこうさせたか』 [全方位書評]

金子 文子2017『何が私をこうさせたか -獄中手記-』岩波文庫(青N 123-1)

言わば「自伝文学」である。しかし、ただの自伝ではない。23才の確定死刑囚が担当判事から「過去の経歴について何か書いて見せろ」と言われて記した「生い立ちの記」である。

「生まれ落ちた時から私は不幸であった。横浜で、山梨で、朝鮮で、浜松で、私は始終苛められどおしであった。私は自分というものを持つことができなかった。けれど、私は今、過去の一切に感謝する。私の父にも、母にも、祖父母にも、叔父叔母にも、いや、私を富裕な家庭に生れしめず、至るところで、生活のあらゆる範囲で、苦しめられるだけ苦しめてくれた私の全運命に感謝する。なぜなら、もし私が、私の父や、祖父母や、叔父叔母の家で、何不自由なく育てられていたなら、恐らく私は、私があんなにも嫌悪し軽蔑するそれらの人々の思想や性格やをそのまま受け容れて、遂に私自身を見出さなかったであろうからである。だが、運命が私に恵んでくれなかったおかげで、私は私自身を見出した。そして私は今やもう17である。」(279.)

金子 文子:1903-1926
「関東大震災の2日後に、治安警察法に基づく予防検束の名目で、愛人(内縁の夫)である朝鮮人朴烈と共に検挙され、十分な逮捕理由はなかったが、予審中に朴が大正天皇と皇太子の殺害を計画していたとほのめかし、文子も天皇制否定を論じたために、大逆罪で起訴され、有罪(死刑判決)となった。後に天皇の慈悲として、無期懲役に減刑されたが(恩赦を拒否し)、宇都宮刑務所栃木支所に送られて、そこで獄死した。」(ウィキペディアよりカッコ内は引用者が補う)

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이선제 묘지 귀향이야기(李先齊 墓誌 帰郷記) [全方位書評]

이선제 묘지 귀향이야기(李先齊 墓誌 帰郷記)
불법반출과기증,보물의탄생까지(不法搬出と寄贈、宝物の誕生まで)
국외소재문화재재단,2018(国外所在文化財財団 2018) ISBN 979-11-86625-16-3

李 先齊(イ ソンジェ:1390-1453)は、『高麗史』や『太宗実録』などの編纂事業に携わった韓国の文人であった。しかし子孫が疑獄事件に巻き込まれたことで、彼に関する多くの記録が失われ、生没年すら定かではない忘れられた存在となっていた。1998年に彼の墓が盗掘されて、その墓誌が密かに日本に持ち込まれた。一度は空港の税関で発見されたが、その時は簡単な記録が残されただけで現物の差し押さえには至らず、直後に巧妙な手段で持ち出されてしまった。2014年になって、日本に所在する韓国文化財を取り扱う「国外所在文化財財団」がその存在を知るに至り、16年前に記された関係資料との照合作業などを経て不法輸出品であることを確認し、4年間に渡り所蔵者ほか関係者・法的専門家と共にその取扱いを慎重に協議した結果、2017年「粉青沙器象嵌李先齊墓誌寄贈提案書」が作成され、東京で「粉青沙器李先齊墓誌寄贈式」、ソウルの国立中央博物館で「美しい寄贈 粉青沙器李先齊墓誌寄贈式」が行われて当該墓誌は無償で韓国側に寄贈された。寄贈後に韓国の国宝「宝物第1993号」に指定されて、今は故郷の光州国立博物館に収蔵されている。

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和田2015『遺跡保護の制度と行政』 [全方位書評]

和田 勝彦 2015 『遺跡保護の制度と行政』同成社

表紙に著者の肩書(それも14年前の元の所属)が記されている珍しい書籍である。

「本書は、そのように多様な意味や価値をもつ遺跡について、「文化財保護法」を中心とする法令で構成されているその保護、取扱いに関する「制度」と、それに基づいて国と地方公共団体の行政機関が行う「行政」の仕組みおよび「実務」を説明し、そしてさらにそれらの将来の方向性を提案することを主な目的としている。」(i)

私の着眼点は、「遺跡」と「埋蔵文化財包蔵地」の相互関係である。

「本書が対象とする「遺跡保護」の制度は、上記の1の「記念物」(そのなかの「遺跡」)および3の「埋蔵文化財」に関する制度によって構成されている。「遺跡」が埋蔵されている土地(埋蔵文化財包蔵地)には法第6章の埋蔵文化財の制度がはたらき、「遺跡」(が埋蔵されている土地)のうち重要なものは、法第7章の「史跡」の制度で護られる。」(16.)

本書を通じてそうだが、「遺跡」と「埋蔵文化財包蔵地」という2つの用語の使い分け、すなわちどのような時に「遺跡」を用いて、どのような時に「埋蔵文化財包蔵地」を用いるのかといった明確なルールは見出し難い。それぞれの用語が法令上に現れた経緯に応じて(「遺跡」は第2条 第1項 第4号、「埋蔵文化財包蔵地」は第93条 第1項)、その都度、融通無碍に用いられているとしか思えない(72-76.)。

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井上2017『天皇の戦争宝庫』 [全方位書評]

井上 亮 2017 『天皇の戦争宝庫 -知られざる皇居の靖国「御府」-』ちくま新書1271

筆者は、私と同い年のジャーナリストである。

「御府(ぎょふ)は計五つ造られた。各御府の名称と戦争、造営時期(資料によっては相違あり)は次のようになっている。
〇振天府=日清戦争、1896(明治29)年10月
〇懐遠府=北清事変(義和団事件)、1901(明治34)年10月
〇建安府=日露戦争、1910(明治43)年4月
〇惇明府=第一次大戦・シベリア出兵、1918(大正7)年5月
〇顕忠府=済南・満州・上海事変、日中・太平洋戦争、1936(昭和11)年12月
御府のほか大砲など大型の戦利品を収蔵する砲舎や天皇のための休所、模型置き場などもあった。戦後に取り壊されたものもあるが、御府本体の建物はすべて往時の姿で残っている。」(9-10.)

まさに「知られざる」そして「忘れられた」施設群である。ワープロの変換候補にも「ぎょふ」→「御府」は出てこない。

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『現代思想』2018年9月号(Vol.46 No.13)特集 考古学の思想 青土社 [全方位書評]

討議 :溝口(考古学)・國分(哲学)・佐藤(宗教哲学)、中沢(人類学)・山極(霊長類学)
エッセイ :港(映像人類学)
概論 :溝口(考古学)
考古学のフロント :ハミラキス(考古学?)、五十嵐(考古学)、吉田(考古学)、内田(考古学/考古学史)、辻川(考古学)
考古学的方法 :田中(表象文化論)、三中(進化生物学)
人類史の更新 :大西(人類学)、柳澤(哲学/キリスト教思想)
現代思想との交差 :佐藤(宗教哲学)
の14本で構成された特集号である。

『現代思想』誌としては、衝撃的な1990年12月号「考古学の新しい流れ」あるいは大規模科研の産物としての2016年5月号「人類の起源と進化」以来の考古学特集号である。
本特集が生れた震源は、以下の一文と思われる。

「さて、めまぐるしくうつりゆく、現代思想の(こう呼んでよければ)「物質的」転回を考えたとき、同じく物質の学を自認しているはずなのに、その転回にどこか「乗り遅れ」ている学問分野があるように思われる(そこに乗らなければいけないわけでもないのだが)。それが「考古学」である。」(佐藤 啓介2016「死者は事物に宿れり」『現代思想』44-1:232.)

「乗り遅れている」とされた学問に対する、いわば「テコ入れ」企画である。
果たして「テコ」は入っただろうか?

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緑川東問題2018(その7) [論文時評]

まだまだ続く。
今回は、縄文時代文化研究会2018年発行の『縄文時代』第29号より。

「敷石住居跡と大形石棒に関しては、昨年度から引き続き、東京都国立市緑川東遺跡SV1と出土の大形石棒4点について議論が展開されており、五十嵐彰は「廃棄時設置」という解釈に批判的見解を示す。そのなか東京考古談話会主催による公開討論会「緑川東遺跡の大形石棒について考える」が開催された。これらの議論は「遺物論」の項目で詳細に取りあげられると思われるが、敷石住居跡に関わる議論であることから、本項でも概括的に触れておきたい。討論会では、これまでも異論を呈してきた五十嵐彰が、これらの形成過程について持論を提示する。五十嵐は、大形石棒が敷石遺構SV1構築時ないしは使用時に並置されたものであり、敷石住居の転用ではないと結論づける。五十嵐の指摘するように、あらゆる可能性を排除せずに先入観にとらわれずに形成過程を検討することは重要であろう。」(阿部 昭典2018「遺構論」:185. 以下、文献リスト番号および註は省略して引用)

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2018c「鉛筆で紙に線を引く -考古学的痕跡-」 [拙文自評]

2018c「鉛筆で紙に線を引く -考古学的痕跡-」『現代思想』第46巻 第13号(2018年9月号 特集=考古学の思想)青土社:101-113.

遥かな過去を掘り起こし、まだ見ぬ未来を創造する。
考古学はその発見のたびごとに人類史を書き換え、私たちの人間や社会をめぐる常識を揺さぶり続けてきた。
本特集では、考古学の最前線から、現代思想やイメージ論への拡張的な側面まで、その尽きせぬ魅力を掘り起こしていく。(出版社宣伝文より)

書店発売は、8月27日予定とのこと。

デリダの灰に始まり、インゴルドの線を経由して、ショーバン先生のことばに終わる。
思想・哲学をメイン・フィールドとする完全アウェイの試合で、持てるもの全てを出し尽くす。
さて、その採点結果は?

一言で言えば「縦横無尽」。英語で言えば'boundlessly'か。
大胆なサイドチェンジ、オープンスペースへのロング・フィード、2列目・3列目からの駆け上がり、ヒールとスルーを交えた多彩なワンツー、流動的な全員攻撃そして全員守備、これぞ「リビング・フットボール」。

途中から様々なブロッブ(blob)が結びつきながら、思いもよらない化学反応を示し始めた。
あるいはバラバラだったピースが然るべき場所に納まっていく、とでも言おうか。
第2考古学の目標である、本質的で根源的な事柄に少しでも接近すること。
果たして?
確かに言えることは、一つ。
ここに一つの痕跡を記した、ということ。
後年、何処かの、誰かが、その痕跡を確かめてくれるだろう。

振り返れば(後知恵的な気もするが)、以前にも引用した以下の文章に導かれて、という気がする。

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タグ:痕跡
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田中2017『文化遺産はだれのものか』 [全方位書評]

田中 英資 2017 『文化遺産はだれのものか -トルコ・アナトリア諸文明の遺物をめぐる所有と保護-』春風社

2007年にイギリスの大学に提出した博士論文をもとに、その後の成果も含めて昨春出版された。非常に重要な成果である。

「一般に、文化遺産の返還問題とは、盗難や売買など何らかの事情により本来あった場所から移動した文化遺産(考古学的遺物)に対して、そうしたものが本来あった場所にあるのが自然であるという考え方に基づいて、その返還を求めることである。すなわち、「文化遺産は誰のものか」、「文化遺産はどこにあるべきか」という、文化遺産の所有と保存されるべき場所の二点が争点の中心になっている。」(133.)

トルコは、ギリシャ・エジプトと並んで、数多くの文化財が国外に流出している「原産国」である。
トルコ北西部に住むある人は山に狩猟に出かけて「地面から鉄の棒のようなもの」が突き出ているのを見つけて、そのことを警察に届けなかったということで、逮捕されて刑務所に入れられてしまったという(29.)。トルコでは、いかに政府が考古資料の保全・管理に気を使っているかという逸話である。
その背景には、トルコにおいて遺跡の盗掘や遺物の不法流出が横行している問題がある。
ある人は、「トルコでは耕運機よりも金属探知機の方が多い」とすら言う。

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