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考古時間論(総括6) [痕跡研究]

「地層累重」とは、地層というプラス痕跡の重複をいう。上に重なるプラス痕跡[T2]は、下に重ねられたプラス痕跡[T1]よりも新しい[T1→T2]。
「切り合い」とは、垂直面というマイナス痕跡による重複をいう。遺構の場合は、単独の穴ぼこの存在が既に生活面という堆積層を「切って」穴ぼこが掘られるという広義の「切り合い関係」を示している。但し、より一般的には穴ぼこ同士の「切り合い関係」、そして剥離面の「切り合い関係」を指している。切られたマイナス痕跡[T1]は、切っているマイナス痕跡[T2]よりも古い[T1→T2]。

穴ぼこ同士の切り合い関係(遺構切り合い)については、(先行する)穴ぼこの形成(マイナス痕跡の形成)→穴ぼこの堆積(プラス痕跡の形成)→(後行する)穴ぼこの形成(マイナス痕跡の形成)→穴ぼこの堆積(プラス痕跡の形成)というサイクルを辿る。
剥離面の切り合い関係(石器切り合い)については、プラス痕跡の形成という要素が介在しない。常に(先行する)剥離面の形成(マイナス痕跡)→(後行する)剥離面の形成(マイナス痕跡)の連鎖である。プラス痕跡の形成が発現するのは、考古資料として私たちが手にした接合資料を剥離順に接合して接合関係を復元する場面においてのみである。

「累重」という現象(プラス痕跡の重複)をあらゆる痕跡現象に適応しよう。土層の積み重なりだけではなく、土器表面における粘土紐の重なりから、筆で描いた文字を構成する線の重なりから書き順を復元する作業に至るまで。

「切り合い」という現象(マイナス痕跡の重複)をあらゆる痕跡現象に適応しよう。重複する住居跡や剥離面だけではなく、金属器鋳型における沈線の切り合いから、古墳の壁画に生じた照明器具による傷跡の重なりに至るまで。

取りあえずの課題を掲げよう。

A:まず地層(層位論)で言われている「累重法則」と遺構の「切り合い法則」とを正しく位置づけなければならない。そのためには、遺構論としてプラス痕跡とマイナス痕跡とを正しく位置づける必要がある。「土層が含む遺物・遺構の時間的な前後関係を中心とする情報を抽出するのが考古学研究における層位学」(鈴木(保)2002:508)ならば、「累重関係」のみを十年一日の如く唱えるのではなく、「切り合い関係」をも等しく認識しなければならない。

:同じ「切り合い現象」として、遺構の切り合いと遺物の切り合いについて、相互の資料的性格の違いを対照しながら論じていかなければならないだろう。遺構の場合は、主に住居跡が論じられているが、住居跡と墓穴では遺構論的に性格が異なる。遺物の場合は、主に石器が論じられているが、土器の場合はどうなのか。そして、<場>である遺構と<もの>である遺物を同じ切り合いという事象を通じて検証していくとき、そこに<場ともの>という考古資料独自の性格が浮かび上がってくるだろう。

:重なり合いと切り合いという事象を、痕跡が重複するという重複痕跡(パリンプセスト)という視点から資料論的に位置づけなければならない。すなわち、重なり合いとは、プラス痕跡の重複である。これを「加重複」と呼ぼう。切り合いとは、マイナス痕跡の重複である。これを「減重複」と呼ぼう。あらゆる考古資料、物質資料は、加重複と減重複の組み合わせで成立している。
その組み合わせを読み解いていくことが、私たちに課せられた仕事である。


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